2026年11月4日
塾講師向け「指導の極意」|中学受験国語・理由を説明する記述
模範解答を写すと、答案は整います。しかし、生徒が次の文章でも理由を説明できるかは別です。記述添削では、足りない言葉を全部講師が補う前に、「問われたこと」「本文の根拠」「根拠どうしのつながり」のどこで止まっているかを見ます。短い物語文で、問い返しと書き直しの例を紹介します。
塾・予備校・学校などで教える方、指導を学びたい学生の方へ。問題・文章・数値・答案は、指導の考え方を説明するために本記事用に作成したものです。実際の入試問題、生徒の答案、指導実績ではありません。
添削する前に、設問が求める答えをそろえる
最初に、誰の、どの行動について、何を問う設問かを確認します。「どうしたか」と「なぜそうしたか」が混ざると、本文の言葉を拾えていても答えになりません。字数指定や文末指定がある場合は、それも別に確認します。
今回は理由を問う問題です。学校ごとの採点基準を再現するのではなく、授業で答案を検討する観点を示します。表現が模範例と違うだけで誤答とはせず、本文と矛盾しないか、必要な関係を説明しているかを見ます。
短文と答案例で、根拠の不足を見分ける
記事用に作成した短文・設問
放課後、遥は花壇の前で足を止めた。朝の雨で土が流れ、昨日植えた苗が傾いていた。「先に帰るね」と友達に言われても、遥はかばんを置いた。クラスで世話をすると決めた苗を、そのままにはできなかったからだ。遥は土を寄せ、苗を立て直した。
問:遥がかばんを置いたのはなぜですか。本文に即して説明しましょう。
- 答案A「苗が傾いていたから。」
- 状況は拾えています。「傾いていたら、必ずかばんを置くのかな。遥が放っておけなかった事情はどこ?」と、状況と気持ちのつながりへ促します。
- 答案B「花が大好きだったから。」
- ありそうな気持ちでも、この短文には直接の裏付けがありません。「そう判断できる言葉を本文で示せる?」と聞き、想像と根拠を分けます。
- 答案C「土を寄せて苗を立て直したから。」
- 後の行動を答えています。「何をしたかは書けたね。そうしようと思った理由は?」と、設問へ戻します。
講師が答えを言う前の、3つの問い返し
- 状況:「花壇で何が起きていた?」――雨で土が流れ、苗が傾いていた。
- 判断:「遥は、なぜそのままにできなかった?」――クラスで世話をすると決めた苗だった。
- 行動との関係:「かばんを置いて、何をしようとした?」――土を寄せて苗を立て直そうとした。
三点を一度に要求すると止まる生徒には、まず本文の箇所を指してもらい、次に口頭でつなぎます。講師の言葉を復唱させるだけで終わらず、生徒が選んだ根拠を確認します。
書き直し例
雨で傾いた、クラスで世話をすると決めた苗を放っておけず、立て直そうと思ったから。
これは唯一の正解表現ではありません。「クラスで世話をする苗」「雨で傾いた状況」「放っておけず直そうとした理由」が無理なくつながるかを見ます。字数を指定する場合は、残す要素を整理してから縮めます。
書き直し後は、根拠を説明してもらう
「この答案のどの部分が、本文のどの言葉に対応する?」と聞きます。書けた答案でも、理由を自分で説明できなければ、講師の表現を再現しただけかもしれません。
続いて「答案Aへ一つだけ情報を足すなら何を足す? なぜ?」と考えてもらいます。単に長くするのではなく、行動の理由を説明するために必要な情報を選べるかが確認点です。
次の短文では別の行動理由を扱い、同じ人物像を当てはめないようにします。一つの添削例から、物語文はすべて「責任感」で解くなどの型を作らせないことも大切です。
赤字の量より、次に直せる点を明確にする
- 設問の対象や理由を取り違えたのか、根拠が足りないのかを分ける。
- 「もっと詳しく」だけでなく、どの関係を説明するかを示す。
- 誤字・主語述語・字数などの表現面と、読み取りの問題を分ける。
- 講師の解釈を押し付けず、本文に即した別表現を検討する。
国語の授業や答案添削の経験は、こうした根拠の確認に活かせます。本文が長くなった場合も、まず設問と根拠へ戻るという指導の軸は保ち、生徒の既習事項に合わせて課題量を調整します。
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