2026年11月1日
SUSUMU JUKU / 2025 EXAM REVIEW
答えの先に、解ける理由を。
渋谷教育学園幕張中学校・2025年度 一次 国語
2025年度一次の国語を、永井玲衣の文章と安岡章太郎の小説の二題に分けて解説します。比喩の言い換え、記述の要素、選択肢の言い過ぎを整理し、本文に戻る読み方を身に付けましょう。
第1問|永井玲衣「水中の哲学者たち」
この大問で学ぶこと
日常の小さな言葉が持つ重さを読む
解くときの着眼点:サイコロ、花火、切り株などの比喩を、その前後にある具体的な出来事と言い換えて確認します。
問一a|漢字
不可解
- 「フカカイ」は理解できず、わけが分からないという意味の不可解です。
- 似た音の字を当てず、「解することができない」という語の作りで確かめます。
問一b|漢字の読み
そうまとう
- 走馬燈の読みです。回る影絵のように、思い出が次々と現れる比喩と結び付きます。
- ここでは漫才の一言をきっかけに過去が一気によみがえる場面です。
問一c|漢字の読み
ひょうし
- 拍子は、何かのきっかけやはずみを表します。木や泉が急になくなる文脈で用いられています。
- 音楽のリズムを表す場合だけでなく、前後の動作に応じた意味を確認します。
問二|又吉直樹と共通する作家
オ(太宰治)
- 引用されている受賞会見の話では、芥川龍之介と並んで太宰治が挙げられています。文学史・作家に関する知識を問う設問です。
- 本文の主題だけから作家名を推測するのではなく、引用の固有名詞を確認します。
問三|自由律俳句に当てはまらないもの
イ
- 自由律俳句は、五・七・五の定型にとらわれない俳句です。イは小林一茶の五・七・五の句で、この分類には当てはまりません。
- 句を音読して音数を確認します。本文の便座の句のように日常の経験を扱うことと、自由律という形式の条件は別です。
問四|懇親と同じ漢字
コン=カ、シン=エ
- 懇は、カの「懇切」と同じ字です。親は、エの「親孝行」と同じ字です。
- 根拠・今・混雑・昆虫のコンや、心・新品・慎重・身の上のシンと区別します。音が同じでも語義と熟語を照合して選びます。
問五|映画の人物Aの死
オ(場の流れ的に)
- 人物Aは主人公の強さなどを見せる役割でしか描かれず、その人固有の生活が見えません。そのため物語を進める都合で失われるように扱われています。
- 人物Aに過去が本当にないという意味ではなく、観客にその人の生活が示されない表現への違和感です。
問六|生活の経験が普段見えない理由
オ
- 人を大きな人生物語で語ろうとすると、印象的な出来事ばかりを選び、日常の小さな感覚や経験を忘れがちになるという流れです。
- 単に言語化の技術がない、又は全員が哲学的真理だけを追っているという説明ではありません。前後のハイライトの比喩を根拠にします。
問七|宇宙の質量を持つ人間
イ
- 人は、その人さえ全体を知り尽くせないほど多くの出来事・感情・知覚の重なりから成り立つ、という説明です。
- 身体が小さいことや、他人から重要でないと見えることと、その人の経験の豊かさは別です。他人と一つの思いを共有した結果初めて価値が生まれる、とは述べていません。
問八|専門用語を目立たせた表現の効果
ウ
- 難しい言葉で話し続ける専門家に対し、日常の具体的な経験を聞きたい進行役の期待が満たされない場面です。言葉を目立たせることで、そのずれが際立ちます。
- 専門語の使用を全面的に否定したり、学問の価値がないと結論したりする表現ではありません。この対話の場で何が共有されなかったのかを読みます。
問九|九字の抜き出し
ハイライトアルバム
- 派手で代表的な出来事を集め、そこから人生を説明する比喩です。抜き出し指定なので本文の表記のまま、九字で書きます。
- 派手な出来事に含まれない経験にも意味があるという、本文の対比に戻して確認します。
問十|サイコロを落とすことを恐れる意味
例:人の言葉にはその人の歴史や感覚、思考が重なり、その人自身とも言えるものがあるため、軽く扱うことで相手自身を傷つけてしまうと恐れること。
- サイコロは、その人の中に詰まった経験の重さを示す比喩です。対話で差し出された考えは、ただの音ではなく、その人が生きてきた経験を伴う言葉として聞かれています。
- 答案は「言葉に重なるその人の歴史」から「粗略に扱うと本人を損なう恐れ」へつなぎます。何でも同意するべきだという結論にはせず、相手の発言の扱い方を説明します。
| 本文の表現 | 読み取る内容 |
|---|---|
| 重さのあるサイコロ | その人に積み重なる経験・感覚・思考 |
| 対話で手渡す | 言葉にして相手に差し出す |
| 滑り落とす恐れ | 言葉を軽く扱って本人を傷つける恐れ |
問十一|文章の特徴
イ
- 漫才、便座の句、花火、給食の記憶など、身近な例が哲学的に考える入口として重ねられています。抽象的な主題を具体的な経験に接続する構成です。
- 単に専門用語を一般語へ全て置き換えるべきだと断定する文章でも、老人の話を無加工で引用しただけの文章でもありません。
第2問|安岡章太郎「球の行方」
この大問で学ぶこと
他人への思い込みと、傷つく自尊心を追う
解くときの着眼点:事実として周囲がしたことと、「私」がそう思われたのではと感じたことを分けて読みます。
問一a|漢字
素手
- 道具を使わない手を表す「スデ」は素手です。球を道具なしで受け止めようとする場面です。
- 腕前を表す「腕」ではなく、グローブを使わない状態に注目します。
問一b|漢字の読み
あしもと
- 足許の読みです。足の近くの位置を表します。
- ここでは球が自分の近くを転がる具体的な場所です。自分の立場・状態という比喩的な意味に読み替えません。
問二i|気おくれする
オ(おじけづく)
- 自分と周囲との差を感じ、気持ちが引けたりひるんだりする意味です。
- 失敗後の後悔や、相手への謝罪とは違います。語の意味を、まだ行動に踏み出せない状態として押さえます。
問二ii|むっつりした
イ(愛想がない)
- 不機嫌そうに口数が少なく、愛想を見せない様子です。隣の子の野球についての問いかけ方を表します。
- 堂々としている、さりげないという意味ではありません。表情や応対の調子を表す語です。
問三|一ぷくの「ぷく」
ア
- ここで一ぷくは一服で、休んで飲み物を取るようなひと休みを表します。薬を飲む場合の服用にも同じ漢字・同じ意味の系列が使われます。
- 掛け軸の幅、降伏の伏、転覆の覆、幸福の福とは字も意味も異なります。ひらがなの音だけで選ばないようにします。
問四|シャープペンシルに見立てられた気持ち
例:都会から来ただけで目立ち、中身のない人間と思われているのではないかと落ち着かない気持ち。
- 学校で見せびらかすつもりのなかった文具が注目され、自分がつまらない物を誇示しているように感じています。実際に先生や全員がそう判断したと断定はできません。
- 物珍しい文具と、自分自身を重ねる比喩です。東京から来たことによる注目と、それに見合う自分なのかという不安を一緒に書きます。
問五|よい成績への不安
オ
- 成績がよいことをうれしく思う一方、苦手だった体操までよい評価になり、それが自分の実力とつり合わないと感じています。
- 直ちに学校が不正だと断定しているわけでも、自分を大切にしすぎることだけを怒っているわけでもありません。実力と外からの評価のずれが不安の核です。
問六|道を急ぎながらグローブを扱う気持ち
ウ
- 野球へ行く期待に加え、新しいグローブを手になじませようとしています。使う前から道具を試し、楽しみにしている様子です。
- 他人に新品と笑われないようにするためだけでも、文具の出来事を思い出していらだっているためでもありません。
問七|目の前が白け、遠のく理由
例:野球は田舎の子にはできないという見方が、勝手な思い込みだったと気付いたから。
- 「私」は、都会的で高級な競技だと思う野球を弘前の子がするとは考えていませんでした。しかし、広場では仲間が既に本格的に野球をしています。
- 前から知っていたFの別の面に出会い、自分の優越感の前提が崩れた衝撃です。仲間に拒絶された場面ではないので、仲間外れを理由にしません。
問八|グローブをはめているのが耐え難い理由
例:立派な道具に実力が伴わず、見下していた弘前の子たちに失敗を見られて、自尊心が傷ついたから。
- 外野で何度も球を取り損ね、立派なグローブが自分の不得手をかえって目立たせます。道具と腕前のずれに加え、相手を下に見ていた自分の思いが反転しています。
- 単に球を取れず悲しいだけでは足りません。都会の道具を持つ優越感、失敗の露呈、傷ついたプライドの三つを結び付けます。
| 場面 | 道具と自分のずれ | 気持ち |
|---|---|---|
| 学校 | 目立つ文具と普通の自分 | 中身がないと思われないか不安 |
| 野球 | 立派なグローブと未熟な腕前 | 失敗を見られる恥ずかしさ |
問九|木の上から仲間を見る気持ち
エ
- 野球を都会のものと見ていた「私」は、予想外に上手なFたちと隔たりを感じます。同時に、母には自分の不格好な姿を見られたくなくて木へ逃れ、自分の情けなさも意識しています。
- 単に仲直りを決意したり、他の能力は上だからよいと考えたりする結末ではありません。外の世界との距離と、自分の恥ずかしさが重なっています。
問十|文学史・作家と作品
1=ア、2=カ、3=オ、4=イ
- 1は新美南吉「ごんぎつね」、2は清少納言「枕草子」、3はハン・ガン「菜食主義者」、4はシェイクスピア「ハムレット」です。
- 児童文学・随筆・現代小説・戯曲というジャンルを先に対応させてから作家を選びます。2024年のノーベル文学賞受賞者はハン・ガンです。
解き直しの進め方
第1問では比喩を具体的な人の経験へ戻し、第2問では文具とグローブの場面を並べて、自意識がどう繰り返されるかを考えます。記述答案は例として使い、同じ根拠から自分の言葉で組み立て直してください。
| 段階 | 取り組むこと | 確認すること |
|---|---|---|
| 1|原因を分ける | 間違えた問題を、知識・条件や根拠の読み違い・説明の不足に分ける | どこで手が止まったかを言葉にする |
| 2|解説を閉じる | 自分で根拠・図表・式・答案を組み立て直す | 答えだけでなく、その根拠や判断の理由を説明できるか |
| 3|時間を空ける | 日を改め、類題と合わせて再挑戦する | 条件が変わっても使える考え方になったか |
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